両親へのカミングアウト~カミングアウトを待つ両親の姿を、暖簾越しに眺めながら~

聖心女子大の通学路を下って、広尾駅→新御茶ノ水駅へ
ニコライ堂を眺めながら、神田明神の裏口へ

神社の灯篭には優しく明かりが灯されている
参道には、仲良く手を繋いで歩いている親子連れが歩いている
穏やかで幸せな、形が定まった家族の風景
僕が望んでも、望んでも、手に入れる事が出来なかった、親と子供の幸せな風景

指定された蕎麦屋を、ガラス越しに覗いてみる
両親は既に晩酌を始めていた
父親は顔を赤くしていた
母親もグラスを傾けていた
目分量で酒量を測る…大瓶2本目と言ったところか
お酒を飲んでしまったら…その日はまともな話し合いなんか出来ないよ、お父さん

アルコールが入ったら、真剣に考える作業は終了
だからお酒を抜いて話し合おうと言ったのに
父親は以前から、アルコール中毒気味だった
肝臓を悪くして入院しても、お酒を止められなかった
脳溢血で生死を彷徨った後でも、やはり飲み続けた

人が、アルコールを止められないのは
お酒が好きだからじゃない
辛い気持ちを忘れたいから、お酒を飲んでいる

父親の辛さ、それは…両親との関係に関わる辛さ
父親は、実母から棄てれた人だから
父親の実母は、育児放棄をした人だから

人は幾つになっても、親との関係を、自分の力だけでは整理できない
実は俺も、アル中気味でさ
だから分かるんだ

今実は、
「今はまだ若いから大丈夫だろうけれど、真剣に考えなさい」
とカウンセリングの先生に諭されて…アルコールを止める努力を続けている

杯を重ねる両親の姿を見て、今日は無理だと悟った。
両親が心を開いていないから。
この場は何を言われても、話を聞くだけに留めよう
酔った人に何を言っても、相互理解が進むことは無い

軽くため息を付いて
「いらっしゃいませ」の声を背中に受けながら、
僕は暖簾をくぐった